外生菌根は樹木を宿主とする共生系である。樹木の成長に必要な養分の大部分は菌根菌から供給されるため、菌根菌が共生しない樹木は成長できない。これまでの研究から、樹木と菌根菌の相互作用の中には、菌根圏バクテリアが関与していることが示されているが、その森林生態系における実態については未知の部分が殆どである。本研究課題では、外生菌根圏バクテリアの基礎的知見を集積することで、植生遷移に伴う樹木-菌根菌-バクテリアの三者共生の相互作用機構について新たなモデルを提言することを目的とした。 富士山火山荒原においてパッチ状に生育する一次遷移樹種であるミヤマヤナギについて、菌根圏を含んだ土壌サンプルを採取し、菌根菌と菌根圏バクテリアをそれぞれITS領域及びバクテリア特異的プライマー16S rDNA領域をシークエンスし種を推定した。また、希釈平板法を用い、培養可能なミヤマヤナギ菌根圏、非菌根圏土壌、裸地土壌バクテリアの種を推定した。 その結果、小パッチや大きなパッチの外側から採集した菌根ではProteobacteria門が高頻度で検出されたものの、大きなパッチの内側では放線菌門やBactefoides門、Acidobacteria門に属するものも多数見られ、植生の発達とともに菌根圏バクテリアの種組成も変化する可能性が示唆された。このため、植生調査データから得られる環境変数を解析に組み込み、遷移の発達段階の違いが菌根圏バクテリアの群集構造に及ぼす影響を解析したところ、ミヤマヤナギの成長に伴う菌根菌種の遷移系列と菌根圏バクテリアの種構成が対応していることがわかり、植生遷移と共に菌根圏バクテリアの種構成は変化していくことが示された。
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