研究課題
本研究の目的は、安定同位体炭素のパルスラベリング手法を用いて、光合成によって得られた炭素が根系へ分配され、一部は「成長・代謝に使われ」、「呼吸として放出され」、残りは「樹体に蓄積され」ていく様子を記述し、これらの情報をよりよい生態系炭素循環モデルの開発に資することである。そのために、安定同位体比を現場で高頻度で測定できるTDLSを導入し、根からのCO2を測定できる新しいチャンバーによる呼吸観測と、ラベリング後のサンプル分析を組み合わせる。初年度は、すでにブナ(Fagus sylvatica L.)、オーク(Quercus petraea Matt Liebl)、マツ(Pinus pinaster Ait)を対象にラベリング実験が行われたフランスの試験地において、長期間経過後の同位体比変動を明らかにするために、各コンパートメントに蓄積されている炭素安定同位体比を測定した。ラベリング後に土壌サンプリングを定期的に行い、細根と、土壌微生物、メッシュにより根を排除したコア中の土壌微生物にわけ、それぞれ有機物として含まれている炭素中の^<13>Cと、呼吸として放出される^<13>Cを測定した結果からは、細根と土壌有機物のどちらからもほぼ同時にシグナルが検出されたこと、メッシュにより根の侵入を防いだコアサンプルには、土壌への炭素配分量が少ないことから、炭素が細根を通じて短時間で土壌微生物(菌根・菌糸、浸出物由来の微生物を含む)へと供給されていた。成果はDannoura et al.,(2011)およびEpron et al,(2011)にて公表した。また、日本におけるラベリング実験の場所の選定および、樹木の選定、ラベリングプロットの作成を行った。山城水文試験地のコナラを対象に、TDLSを現場に設置し、チャンバーの準備とあわせ、温度、湿度をモニタリングするための設備を整えた。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件)
New Phytologist
巻: 190 ページ: 181-192
Ecological Research
巻: 26(1) ページ: 95-104
森林応用研究
巻: 19(2) ページ: 1-6
Plant Biosystems
巻: 144(2) ページ: 434-439