研究課題
本研究の目的は、安定同位体炭素のパルスラベリング手法を用いて、光合成によって得られた炭素が根系へ分配され、一部は「成長・代謝に使われ」、「呼吸として放出され」、残りは「樹体に蓄積され」ていく様子を記述し、これらの情報をよりよい生態系炭素循環モデルの開発に資することである。そのために、安定同位体比を現場で高頻度で測定できるTDLSを導入し、根からのCO2を測定できる新しいチャンバーによる呼吸観測と、ラベリング後のサンプル分析を組み合わせる。最終年度である2年目は日本におけるラベリング実験およびサンプリングを行った。対象となるコナラは胸高直径33.7cm、樹高11.7mであり、非常に大きく樹冠全体を覆うことができず、かわりに最も高い位置にある枝2つを利用した。季節による違いをみるため、夏から秋にかけて、同じ枝で、合計7回のラベリングを行った。その結果、葉から取り込まれた炭素が細根から呼吸として放出されるまでに夏ではおよそ1日(22-28時間)かかり、秋になり気温が低下すると、2日程度かかっていた。さらに、これまでに行ってきた実験の結果、光合成で固定された炭素のうち、土壌呼吸に配分される炭素は、ブナ(Fagus sylvatica L.)で生育期に最大の18-21%、5月や8月は1-8%、オーク(Quercus petraea Matt Liebl)で7-11%、マツ(Pinus pinaster Ait)で生育期に7-10%、休眠期に1-4%、(成果はEpron et al., 2011)と、季節によって割合が異なり樹種固有のフェノロジーによってその配分率を変えていることが明らかになってきている。すなわち、土壌から放出される二酸化炭素は、数日前の樹木の活動に影響され、そのタイミングや量は樹種や季節によって異なることが示された。このことは気候変動予測等にとって重要な情報になると考えられる。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)
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