本研究の目的は、中山間地域における集落の機能不全に因る消滅及び集落群の連鎖消滅を回避するため、集落対策の議論・対策の土台となる、集落機能レベルを集落間連携の実態も交えて客観的に把握できる手法の開発に取り組むことである。 平成23年度における取り組みの目的は、モデル集落及びその他の集落調査の結果を元にした集落機能の整理とそれに対応する統計指標の抽出にあった。具体的には、平成22年度の繰り越し調査と平行して、新たに島根県浜田市弥栄町や熊本県植木町での集落調査やモデル集落での追加調査を実施し、集落機能についての多様性と普遍性、または機能間の相乗性と相殺性についての自己理解を深め、その結果を元に集落機能の整理に取り組んだ。機能整理の進捗に合わせて、重要視する集落機能を反映しうる統計指標の調査を行い、利用可能指標の分布及びその程度、また、欠損領域の確認等に取り組んだ。 今年度の取り組みの結果、集落機能を構成する要素の多層性(地利条件、構成員条件、活動条件、外部条件等)や機能間の相関性を踏まえた集落機能の整理が進んだ。この整理は、状況が深刻な中山間地域の集落において、集落の内部条件や外部条件を踏まえ、機能の現況や機能間の相関関係を考慮した上で、当該地域振興の将来戦略を検討するツールとしての進化が望めるものであると考えている。ただし、反面、当該研究においては、機能整理の次の段階である抽象化作業が施し難く、統計指標との調整が上手くいかず、機能評価の指標抽出・確定まで至っていないため、次年度の課題に持ち越している。
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