担子菌類において、効率的な遺伝子組換え技術を確立することを目的として、研究を進めている。特に、DelsGate法による遺伝子破壊技術と、Cre-loxP法によるマーカー遺伝子回収技術を目指している。昨年度までに、シイタケにおいてDelsGate法により、遺伝子破壊ベクターを効率的に作出する技術は完成した。 今年度は、昨年度作出したlcc1遺伝子破壊ベクターを用いて、遺伝子破壊の条件検討を行ったが、残念ながら、これまで遺伝子破壊株が得られていない。そこで、今年度は新たな遺伝子破壊用遺伝子のクローニングを行った。その結果、子実体発生を負に制御しているpcc1遺伝子と、非相同組換えに関わるku80遺伝子のクローニングに成功した。pcc1遺伝子に関しては、子実体形成能力を持つ、二核菌糸体で発現が低いことが確認された。現在は、これらの遺伝子に関して、Dels Gate法を用いて、遺伝子破壊ベクターを作出しているところである。 シイタケにおいて、遺伝子破壊の条件検討を進めるには、非常に時間がかかることから、ウシグソヒトヨタケを用いて、Cre-loxP法が可能かどうかを検証することとした。ウシグソヒトヨタケにおいては、既にKu70破壊株と、ハイグロマイシン耐性マーカーによる遺伝子破壊技術が確立されている。そこで、ウシグソヒトヨタケ遺伝子破壊ベクターに、loxP配列を組み込んだ。得られたベクターは、ハイグロマイシン耐性マーカー両端にloxP配列が組み込まれ、容易に任意の遺伝子の破壊ベクターが構築できるデザインとした。現在は、得られたベクターを用いて、Creレコンビナーゼによりハイグロマイシン耐性マーカー遺伝子が回収できるかをためしているところである。
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