昇降軌道の違う4ルック(空間解像度はレンジ方向で約10m解像度)のPALSAR画像の後方散乱係数(シグマノート)の地形効果補正の高度化をはかった。ここでいう地形効果補正とは、レーダのlocal incidence angleを考慮した補正を指し、DEMを必要とするものである。次に、航空機LiDARデータ(約1m解像度)と地上調査データ(0.04haの毎木調査)から針葉樹人工林における地上部現存量(AGB)を推定する高精度のモデルIを作成し、平滑化によるスペックルの影響を軽減した解像度(空間解像度の劣化は不可避であるため、実質は30m~50m程度の解像力になる)のPALSARデータを適切に評価しうる広域のLiDAR-AGB画像をモデルIから作成した。モデルIおよびIIの構築には、一般化線型モデルおよびカーネルトリックによるサポートベクターマシンをそれぞれ利用した。PALSARの昇軌道と降軌道の画像の地形効果補正の精度は同程度であったが、結果としてモデルIIの精度には改善の余地が多く残る結果となった。平地林での地上部現存量推定の経験からすると、地形効果補正の精度が改善されない限り、モデルIIの精度を高めることは極めて困難であることが予想された。現在、日本全土に渡って地形効果補正に利用できる地形データは、国土地理院の発行する50m(10m)DEMしかないが(本研究でも地形効果補正に50m-DEMを利用している)、精度の高いDSM(樹冠表面のDEM)が全国的に整備されるようになれば、地形効果補正の精度向上およびモデルIIの精度向上が期待でき、PALSARの地上部現存量推定のポテンシャルを現状よりさらに適切に評価できるようになると考えられた。
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