研究概要 |
木材保存剤の有効成分として用いられている有機系抗菌剤の定量分析は、UV検出器を用いた液体クロマトグラフィー(LC-UV)により行われる場合が多い。しかし、木材成分などが分析を妨害し、正確に定量できない場合がある。著者は、木材保存剤に用いられている有機系抗菌剤のうち、トリアゾール化合物(TAZ)であるシプロコナゾールおよびテブコナゾール、第4級アンモニウム化合物(AAC)である塩化ベンザルコニウム(BKC)について、LC-UVの分析の妨害となる木材成分の固相抽出法(SPE)を用いた除去方法を確立している。本課題では分析方法をより一般化するための検討および分析方法の応用範囲を広げるための検討を行った。 H22~23年度において、シプロコナゾール、テブコナゾール、ヘキサコナゾールおよびプロピコナゾールの4種類について、6樹種の木材成分による影響を確認するとともに,影響する成分がSPEにより除去可能であることを確認した。本年度は,屋外暴露試験や溶脱試験などにおける4種類のTAZの定量分析についてもSPE試料前処理が有効であることを確認した。木材保存剤の有効成分として用いられているAACのうちBKCについても同様の検討を行い,SPEの有効性を確認した。また,UV検出器では検出できないAACであるジデシルジメチルアンモニウムクロリドおよびN,N-ジデシル-N-ポリオキシエチル-アンモニウムプロピオネート(DMPAP)を対象とし、蒸発光散乱検出器を用いた定量分析を試み,木材成分による影響について検討した。その結果、6樹種の木材成分による影響はほとんど生じないことを確認した。また、この方法は屋外暴露試験などを経た材料にも適用可能であることを確認した。以上、確立した手法は保存処理木材の品質管理精度の向上に寄与するのみならず,木材保存剤の性能を評価する各種試験などにも応用可能なものであった。
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