研究概要 |
OMV (Oncorhynchus masou virus; SaHV-2)はサケ科魚類に感染して肝炎と基底細胞癌を引き起こすウイルスである。このウイルスは1978年に分離されて以来,わが国の増養殖現場で猛威を振い,サケ科魚類種苗の安定的生産の妨げとなっている。本研究は,OMVの全ゲノム配列決定とゲノムワイドな解析を展開し,宿主の発癌誘起機構の解明とOMV感染防御に有効なワクチンを開発することを目的とした。 今年度は次世代シーケンサーによりOMV標準株である00-7812株およびニジマス病魚由来RtNa0010株のドラフトゲノムを取得した。OMVの推定ゲノムサイズは150Kbpであり,得られた総コンティグ長は166Kbpであった。宿主由来の配列が混入している可能性があるが,ほぼ全ゲノムをカバーしていることが推察された。次いで,1978年から現在まで,各地で各魚種から分離されている200を超える株から代表株を選抜し,ニジマスに対する病原性,ニジマス由来RTG-2細胞でのCPEおよび増殖性を比較したところ,2000年にニジマスより分離した株の感染力価は他の株より10倍以上高く,魚体重1g,11gおよび114gのニジマスを用いた人為感染試験では魚体サイズによらず70~88%と高い死亡率をもたらした。これら代表株のRFLP解析により,サクラマス,ギンザケおよびニジマス由来株の型別が可能となった。次年度のサブユニットワクチン開発に向け,不活化ワクチンの抗原量を検討したところ,ウイルス感染粒子数として10^7TCID_<50>/尾程度が適切であることが明らかとなった。
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