研究課題/領域番号 |
22780169
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 直樹 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教 (30502736)
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キーワード | 生体防御反応 / 二枚貝 / 病原体関連分子パターン / 血球 / 二本差RNA / 遺伝子発現 |
研究概要 |
研究課題二年目の本年は、東日本大震災の影響により研究遂行に適したマガキ入手が困難となったため、入手可能な二枚貝・アサリを用いてdsRNA接種に対する反応性を検討、マガキの場合と比較を行った。まず、マガキで血球噌加を誘起したGFP配列をもつ短鎖RNAをアサリ閉殻筋に接種し、24時間後及び48時間後の血リンパ中の血球数を計測した。その結果、全ての国おいて統計的に有為な違いは認められず、マガキでみられたような短鎖dsRNAに対する急性血球増加減少は観察されなかった。次に、より長いdsRNAに対する反応性を検討するため、約600塩基よりなる線形動物Cytochrome Oxidase Subunit II配列をもつdsRNAを接種し、血球数の変化を観察した。この場合にも、血球の増加は観察されなかったため、アサリは20塩基~600塩基までの長さのdsRNAを認識し防御反応を誘起する、という機構を持たないことが考えられた。従って、二枚貝綱の中でも種による反応性の違いが考えられる。さて、アサリにおいてはdsRNA接種が防御反応を誘起しないという上記の結果を受けて、アサリにおいては生体防御研究にRNAiの導入が可能であると考え、RNAiを試みた。対象とする因子は血球分泌型の抗菌酵素リゾチームとした。手法としてアサリ閉殻筋に約600塩基のリゾチーム配列をもつdsRNAを接種し、1週間後と2週間後に血球及び外套膜のリゾチーム発現量を逆転写PCRにより解析を行った。また、血リンパ中及び外套膜組織中のリゾチーム活性を測定した。しかしながら、顕著なリゾチーム遺伝子発現量の低下は認められず、また、リゾチーム活性にも低下の傾向は認められず、結果としてRNAiの効果は確認できなかった。dsRNAの質や合成領域、投与量について再検討を行う必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はマガキを用いた実験が出来なかったため、血球増加反応の解明という目的の達成はやや困難になった。しかしながら、アサリに対してはdsRNAが防御反応を誘起しないことが分かり、二枚貝生体防御反応へのRNA干渉法応用の確立、というもう一つの目的達成にはかなり近づいたと考えられたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終目標は、二枚貝の生体防御研究にRNAi法を導入し、これまでに解明が困難とされた各因子の機能解析を試みることである。マガキで見られたdsRNAに対する血球増加反応はこれを阻むものであり、解明が必要ではあるが、アサリではこの点における問題点は無くRNAiを行える見込みがたった。今年度は、アサリ生体防御研究におけるRNAi法確立に向けて研究を遂行する。さらに、マガキとアサリでみられたこの違いについても、受容因子の観点より解明をすすめていく予定である。
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