当初はマガキを用いて実施することを予定していた本研究であるが、東日本大震災の影響でマガキの入手が困難であったため、昨年度よりマガキに換えて入手容易なアサリを用いて研究を実施した。しかし、アサリでは二本鎖RNA (dsRNA)注射による生体防御反応が観察されなかったため、一部予定を変更してdsRNA注射によって対象RNAの働きをノックダウンさせるRNA干渉法(RNAi)確立を目指すことを試みた。研究計画最終年である本年は、昨年度の研究でk考えられた課題、すなわちdsRNA投与量が少なかったために効果が現れなかったと考え、注射するdsRNA量を1個体当たり30マイクログラムから150マイクログラムに増加させた。この際にも標的としたリゾチーム遺伝子の発現量に変動は見られず、また、タンパク質としての活性にも変化は見られなかった。 研究計画遂行中、標的因子であるリゾチームはアイソフォームが存在することが分かり、遺伝子発現や酵素活性からの評価が困難であると想定された。そこで、対象遺伝子を血リンパ局在で重要な生体防御因子であるレクチン(MCL-4)に変更することとした。この変更に伴い、まず、精製したMCL-4分子のアミノ酸配列を解析し、得られた情報から遺伝子配列を決定した。次にMCL-4遺伝子発現部位が血球であることを確認することで、RNAiのノックダウン効果判定するには血球の遺伝子発現を調べる必要があることが分かった。また、タンパクレベルでのノックダウン効果を判定するために、MCL-4分子検出用の特異抗体を作成した。現在、抗体の特異性やMCL-4分子の局在について確認し、ノックダウン効果を判定するための基礎的知見を得ることができたため、今後は導入するdsRNA量をさらに増やして実験を繰り返し、dsRNA注射によるRNAi法の確立と、生体防御反応における影響を評価して行く予定である。
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