ヒラメやホシガレイなどの異体類は市場価値の高い水産重要魚種であり、仔稚魚の放流事業が行われているが、種苗生産過程に出現する変態の異常が大きな問題となっている。本研究は、種苗生産の高効率化のために魚類変態過程の基礎的知見を集積することを目的とし、モデル生物であるメダカを用いて分子発生遺伝学的な研究を行った。平成23年度は、生体内の甲状腺ホルモンレベルを生きたままモニターする系を確立するために、甲状腺ホルモンの代謝に関わるdeiodinase(dio)遺伝子に着目し、この遺伝子のプロモーターで緑色蛍光タンパク質GFPを発現させるトランスジェニック系統の作出を行った。メダカでは、真骨魚類の共通の祖先で起こったゲノム倍加により四肢動物のdio3に対するオーソログが2つ存在する。本研究では、両者について、ゲノムが公開されているメダカ、ゼブラフィッシュ、トゲウオ、トラフグ、ミドリフグからゲノム情報を抽出し、進化的フットプリント解析を行って重要な制御領域の候補を探索した。これらの配列をクローニングし、平成22年度に作出したI-SceIメガヌクレアーゼベクターに組み込み、遺伝子導入した。FO世代の成長を待って、次世代への伝達を確認し、トランスジェニック系統として樹立したい。 一方で、メダカをモデルとして魚類の変態過程を解析するにあたり、メダカの変態に関する基礎的な知見の集積を行った。変態や甲状腺ホルモンに関連のある組織について、他の脊椎動物でこれまでに知られている分子マーカーのクローニングとメダカ胚および稚魚における発現の解析を行った。平成23年度は甲状腺分化を制御する因子、および甲状腺ホルモンの産生やシグナルの伝達に関与する遺伝子を中心に約20のマーカーについて解析を完了した。
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