北海道に生息するサクラマス幼稚魚の初期生活史を明らかにするため、日本海に面する床丹川、茂初山別川、ニナイベツ川と太平洋に面する別々川の計4河川でスモルトの生態調査を行った。耳石微量元素の分析では、別々川、茂初山別川、ニナイベツ川の個体群の耳石Sr:Ca比は低値で推移し、これらの幼魚はすべて孵化時から河川内に留まっているものと推定された。一方、床丹川の個体群の耳石Sr:Ca比は浮上直後から高くなり、汽水あるいは海水を経験している可能性が示された。川幅が狭く急勾配の床丹川では、大量の雪解け水によって幼魚は河口もしくは沿岸域まで押し流され、しばらく滞留しているものと推測された。本研究の結果から、サクラマス幼稚魚のハビタットシフトには河川の地形と物理環境が関連していることが示唆された。
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