本研究では、魚類の生態履歴が日単位で記録されている耳石情報を鍵とし、1970年代以来保存されてきたカリフォルニア海流域のマイワシの歴史的耳石アーカイブを解析することによって、生物特性の長期データを構築し、環境データ時系列とともに解析することで、カリフォルニアマイワシの資源量変動機構を浮き彫りにすることを目的としている。平成23年度は、1986-2006年のカリラォルニア州南部沖における表面水温に加えて春季の動物プランクトン量の経年変化がカリフォルニアマイワシの発育初期における成長速度に与える影響を検討した。その結果、有意な相関はみられなかったが、仔魚期における成長速度は春季の動物プランクトン量と正の相関関係にあった(P=0.08)。また稚魚前期における成長速度は、夏季の表面水温と正の相関関係にあった(P=0.02)。これまでにカリフォルニアマイワシの資源量は、1990年代における表面水温の上昇に伴い増加したことが報告されてきた。資源への新規加入量(0歳魚尾数)は、稚魚前期の成長速度と有意な正の相関関係にあった(P=0.04)ことから、1990年代における水温の上昇が稚魚前期における成長を促進した結果、生残率が増加して加入量が増加し資源が増大したことを示唆している。本研究結果は、発育初期に成長速度の速かった年の新規加入量は多いことを示し、これまで日本周辺海域のイワシ類において提唱されてきた.「成長速度に依存した加入量決定仮説」をカリフォルニア海流域におけるマイワシについても実証した。
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