平成23年度にサクラマスの銀毛(幼魚)調査を実施した北海道北部の2河川において,これらの幼魚が回帰する平成24年度にサクラマス親魚調査を行い,銀毛(幼魚)と回帰親魚間で降海年齢の比較を行った。降海年齢が2歳の個体の割合は,降海時より海洋生活期を終えて河川に産卵遡上したサクラマス親魚の方が高く,2歳で降海した方が海洋での生き残りが良いことが示唆された。 今年度および前年度までに得られた野外調査の結果をまとめると,川で生まれた稚魚は1歳で海に下るものが大半であるが,水温が低い川では2歳で降海する個体が一定の割合で出現することが明らかになった。また,降海年齢が2歳の個体の割合は,降海時より海洋生活期を終えて河川に産卵遡上したサクラマス親魚の方が高く,2歳で降海した方が海洋での相対的な生存率が高いことが明らかとなった。一方,雄は海へ下らずに0+で性成熟して残留型となる個体が多く出現し,雄の残留型の出現率は水温が高い川ほど高くなった。 これらの野外における生活史過程と水温の関係を考慮したサクラマスの生活史モデルを構築し,個体群動態の数値シミュレーションを行った。その結果,水温が上昇するに従い,①残留型となる雄の割合が増えるため漁業対象となる降海型サクラマスの資源量が減る,②降海年齢が単純化するため環境確率性の影響を受けやすくなりサクラマスの資源変動の幅が増加する(例:極端な不漁年が生じる等),が予測された。 以上の研究成果について,日本生態学会静岡大会で口頭発表をおこなった。また,アメマスの遡上時期と河川および沿岸水温の関係について分析し,ロシアサハリン州ユジノサハリンスクで開催されたThe 7th International Charr Symposiumにおいて口頭発表した。
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