研究概要 |
ブリの骨格異常について蛍光色素観察が可能かを検討した。水産総合研究センター五島栽培漁業センターで人工種苗生産されているブリの人工種苗に蛍光色素による骨の生体染色が可能であるかを調べた。ブリの人工種苗は、ワムシまたはアルテミアを栄養強化して各々孵化後1-25または19-29日まで給餌して飼育した。ブリ木工種苗は、受精卵(0日目)から孵化後29日齢までのものを採取し、カルセイン1g/Lの染色液により生きたまま染色した,染色後、筋肉などから非特異的な染色を除くため、97%海氷→95%説海水中に移動した後、60分間以上静置した。その後、フェノキシエタノールで麻酔し、蛍光顕微鏡を用いて紫外線照射下で観察した。その結果、日齢2~3で偽鎖骨が、日齢14で顎骨、鰓蓋骨、神経頭蓋が観察された。また、目齢15前後から神経棘および脊椎骨、尾骨が観察され始めた。また、日齢18日前後から体表色素の発達が始まるとともに、日齢22以降は体幅の増加により脊椎骨の観察が困難になるとが判明した。以上の観察済みの個体は、フォルマリン固定により保存し、アリザリンレッドによる観察を実施する予定である。 以上の成果により、ブリにおいてもカルセイン染色により骨格の観察が可能であることが明らかとなり、各骨格要素の出現時期の概要が明らかとなった。これらの基礎データは次年度以降実施する予定の研究の進展に重要である。さらに、カルセインで生体染色を施して観察を行ったものをアリザリンレッドによる染色を行うため、エタノール中に保存した。これらを蛍光顕微鏡下で紫外線を照射して観察すると、固定後でもカルセインによる染色が保持されることが判明した。通常カルセインにより生体染色したものをフォルマリンなどで固定すると速やかに染色が失われることが知られており、固定後のサンプルでも染色性が維持される場合があることが判明した。
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