研究概要 |
中性型スフィンゴミエリナーゼ1(NSMase1)は,膜脂質スフェンゴミエリンを加水分解し,セラミドを生成するフォスフォリパーゼCである。熱,紫外線,γ線などの環境ストレスによってNSMase1が活性化し,細胞内でセラミドを生成さ健て細胞死(アポトーシス)1が生じる。しかしながら,ストレス条件下で本酵素が活性化するメカニズムは不明であある。本研究では,「環境ストレスに伴うNSMase1の活性化機構」を解明する。 本年度は,熱ストレス処理したゼブラフィッシュ胚由来(ZE)培養細胞から,抗NSMase1ポリクローナル抗体を用いたリン酸化NSMase1を粗精製し,NSMase1のリン酸化部位を調べた結果,セリン残基にリン酸化が生じていることを突き止めた。また,リン酸化部位に対する抗体を作製し,本抗体の有用性を調べた結果,ウエスタンブロット解析によってリン酸化NSMase1を特異的に検出できることが明らかとなった。リン酸化NSMase1を免疫沈降法により粗精製することができることから,リン酸化NSMase1と新規キナーゼが会合した化学形態(複合体)で,共沈する可能性がある。それらの共沈殿物をSDS-PAGEで分離後,ウエスタンブロット解析によってJNKキナーゼを特定した。 In vitroのNSMase1の活性化を調べるため,特定したリン酸化部位を変異させたリコンビナントを作製し,JNKキナーゼと野生型リコンビナントあるいは変異型リコンビナントを用いて,リン酸化反応試験を行った結果,JNKキナーゼが野生型リコンビナントだけを基質とすること。およびNSMase活性は,野生型リコンビナント試験区においてのみ増加することを見出した。 以上のことから,NSMase1の活性化機構は,JNKキナーゼによりNSMase1にリン酸化が生じ,NSMase1活性化することが推定された。
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