研究概要 |
中性型スフィンゴミエリナーゼ1(NSMase1)は,膜脂質スフェンゴミエリンを加水分解し,セラミドを生成するフォスフォリパーゼCである。熱,紫外線,γ線などの環境ストレスによってNSMase1が活性化し,細胞内でセラミドを生成させて細胞死(アポトーシス)が生じる。しかしながら,ストレス条件下で本酵素が活性化するメカニズムは不明である。本研究では,「環境ストレスに伴うNSMase1の活性化機構」を解明する。 本年度は,ZE細胞へ熱ストレスを暴露して,NSMase1ヘリン酸化を生じさせるJNKキナーゼを同定した。また,NSMase1のリン酸化部位はセリン270残基であることを突き止めた。NSMase1のリン酸化部位に対するポリクローナル抗体の開発し,本抗体の有用性について調べた。本抗体は,熱や紫外線ストレス条件下で,リン酸化NSMase1を観察することが可能であった。ストレス状態下に細胞内におけるNSMase1のリン酸化を調べるため,リン酸化部位を変異させた発現ベクター作製し,発現ベクターをZE細胞へ導入し変異型NSMase1を過剰発現させて,ウエスタンブロット解析によってリン酸化を調べた結果,熱ストレスによって応答するリン酸化部位であった。また,JNKキナーゼのリジン55残基目をアルギニンの置換したドミナントネガティブ変異体を過剰発現させたZE細胞では,ストレス状態下におけるNSMase1のリン酸化は減少することが明らかとなった。さらに,JNKキナーゼの阻害試験では,JNKキナーゼ阻害剤に依存してNSMase1のリン酸化が減少することが確認された。 以上のことから,環境ストレスによるリン酸化NSMase1が酵素の活性化に関与することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
細胞はストレス状態下ではNSMase1が活性化しセラミドを生成する。24年度では,ストレス状態下におけるリン酸化NSMase1とNSMase活性およびセラミド含量が相関するかを調べる。また,本リン酸化抗体は,細胞免疫組織化学染色法では,リン酸化NSMase1の細胞内局在を観察には,現在のところ,成功にいたっていない。今後,リン酸化NSMase1の染色法の確立も目指す。
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