研究課題
ストレス誘導性アポトーシスには,中性スフィンゴミエリナーゼ1(nSMase1)の活性化によるセラミド生成が関与している。最終年度では,ストレス条件下でnSMase1が活性化するメカニズムとして,ストレス誘導性リン酸化シグナルであるJNKキナーゼによるnSMase1のリン酸化を見いだした。nSMase活性は,ストレス条件下で一過的に増大することから,細胞内シグナル伝達機構を調べるため,ゼブラフィッシュ培養細胞へJNK阻害剤SP600125を投与したのち,熱ストレスを曝露すると抑制された。in vitro JNKアッセイの結果,JNK活性に依存してnSMase1のリン酸化が生じ,nSMase活性が増大した。JNKの二量体形成に関わるリジン残基(K-55)をアルギニンに置換したドミナントネガティブ変異型を過剰発現させた細胞では,酵素活性およびセラミド含量は正常細胞と比べて低かった。JNKによるnSMase1のリン酸化部位をアミノ酸配列から推定した結果,ゼブラフィッシュ,ヒトおよびマウス由来の酵素に共通するセリン残基(S-270)であることが予想された。そこで,nSMase1のリン酸化ポリペプチドに対するポリクローナル抗体を作製した。ストレス下におけるnSMase1のリン酸化と酵素活性化との関係を調べた結果,熱ストレスに伴ってリン酸化酵素が増加し,酵素活性およびセラミド量が増大した。一方,リン酸化部位を欠失した変異型nSMase1を過剰発現させた細胞では,熱ストレスによるリン酸化が抑制され,酵素活性およびセラミド量が低下し,ドミナントネガティブ作用を示した。以上の結果から,ストレス誘導性のセラミド生成およびアポトーシスには,JNKの活性化によってnSMase1へリン酸化が引き金となって,nSMase1が活性化する機構が明らかとなった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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