研究概要 |
魚類は糖の利用効率が低く,生体エネルギー生産におけるアミノ酸への依存度が高いため,ALTのようなアミノトランスフェラーゼが脱アミノ反応を頻繁に行っていることが予想される.しかし,アミノ酸の代謝を制御する経路についての研究は皆無に近い.哺乳類においてはアミノ酸代謝制御の起点の役割を果たしているものにTOR (target of rapamycin)とPPARs (peroxysome proliferator-activated receptors)があるが,魚類のアミノ酸代謝の制御への関与は不明である.本研究では,TORおよびPPARsによる脱アミノ反応の作動について検討した. 本研究ではマスノスケ発眼胚体由来のCHSE-214においてTORの阻害剤であるラパマイシンを投与し,その際のTORおよびリン酸化TOR,PPARsの発現をウエスタンブロッティングによってタンパク質レベルで評価した.PPARファミリーには-α,-γ,-δなどが存在するが,今回は全てのタイプを探索し,魚類におけるTOR阻害によるPPARファミリーの発現制御を確認した.その結果,哺乳類のTORの阻害剤であるラパマイシンが魚類のTORのリン酸化も阻害することが確認できたため,哺乳類のTORと同様の働きをもつ可能性があることが示された.また,PPARsの発現量が上昇したことから,脂質代謝やアミノ酸代謝といった他の代謝系が働いていると考えられる.哺乳類と同様に,魚類においてもアミノ酸があることによってTORが活性化するが,CHSE-214へのラパマイシンの投与により,濃度依存的にリン酸化TORのタンパク質発現量が減少し,PPARsのタンパク質発現量が上昇した.このことからアミノ酸代謝の制御ではTORとPPARsが重要な役割を果たすものと推定された.
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