研究概要 |
魚類胚発生における栄養吸収およびストレス応答におけるオートファジーの役割を解明することを目的とした。オートファジー可視化魚を用いて,卵黄吸収及び栄養移行時期の体内でのオートファジー活性化部位を観察した結果,受精後発生段階が進むに従って少しずつ活性化し,給餌開始時期(受精後4~5日)に摂餌できない場合,急激に活性が上昇することが分かった。一方,給餌が開始された場合,活性化は起こらなかった。体内のアミノ酸量が低下することが分かった。以上から仔魚の栄養飢餓適応はオートファジーを介したアミノ酸生成が重要であると考えられた。ところで,栄養が十分行き渡った状態でもオートファジーが恒常的に活性化されることを観察した。ゼブラフィッシュ卵の受精直後および胚発生期には内在性の活性酸素種が生成されることを蛍光プローブで検出した。胚にH_2O_2等の酸化ストレスを与えると,オートファジーが活性化されることを見いだした。アンチセンスを用いてオートファジーを阻害すると酸化ストレスに対する感受性が上昇し,発生異常を起こした。これは体内の酸化タンパク質の蓄積と酸化DNA発生による染色体異数性が原因であることが分かった。以上から栄養吸収および酸化ストレス条件下において,オートファジーは恒常性維持に関する重要な役割を持つことが推定された。魚類の卵成熟,胚発生過程における栄養状態やストレス状態の把握は水産動物の種苗生産技術の発展や資源変動の要因解明に有効である。オートファジー活性を指標に最適な飼育条件を設定することにより生産性向上が期待できる。
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