研究概要 |
海産魚の浮遊性卵は日周運動として垂直分布が変化することが知られており,浮力調節は生存適応戦略に関わる重要な生理機能であると考えられる。マツカワ,ニホンウナギ等では卵黄タンパク質の分解によって生じたアミノ酸を浸透圧調節に利用することが明らかにされている。そこで,ヒラメ受精卵に光(400-4300 Lux)を照射し,オートファジーの誘導性及び遊離アミノ酸量の変化を調べた。ヒラメ仔魚は光および紫外線照射によって体内の浸透圧および遊離アミノ酸量が上昇し,オートファジーが誘導された。仔魚の比重(NBS)は,非照射区では艀化直後までは低く,艀化20時間後に上昇したが,光照射によって艀化直前から艀化20時間後まで上昇し,光に対する応答は発生段階特異的であることが分かった。オートファジーに関わるリソソーム分解系の阻害剤Leupeptin,E-64およびBafilomycin A1を飼育水中に投与すると光照射に関わらずNBSの低下が見られた。また,オートファジーを活性化するRapamycinを添加するとNBSが上昇した。これらの反応はc-Jun N-terminal kinase(JNK)阻害剤SP600125によって濃度依存的に抑制されたことから,JNKを介するシグナルによってオートファジーが活性化されることが明らかになった。以上からヒラメ仔魚は光応答性オートファジーによって浮力調節を行っていることが明らかになった。
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