研究概要 |
本研究の目的は,産業集積が確認された製茶業を中心とした緑茶のフードシステムに関して独占的競争下での多地域応用一般均衡モデルを作成し,消費者のリーフ需要から緑茶飲料への選好変化,農業・食品産業別の生産性向上による同フードシステム内のリンケージ効果,並びにそれらによる茶葉・緑茶の生産地域における地域経済への影響を定量的に明らかにすることである.対象とする地域は,茶業の盛んな静岡県,鹿児島県,京都府および三重県である.平成22年度では,これらの地域のうち京都府と三重県の2地域間の社会会計表(SAM)と応用一般均衡(CGE)モデルを作成した.また,作成したモデルを用いて,生産性向上による緑茶フードシステム内のリンケージ効果の定量化を行った.緑茶は,仕上茶(最終財)の生産において,風味や品質のために異なる産地の荒茶(中間財)が使用される.両府県は,三重県が京都府での仕上茶生産に対して荒茶を供給する関係にある.シナリオとして,原材料供給地の三重県での緑茶フードシステムを構成する茶葉生産部門と製茶業部門の生産性向上を想定した.シミュレーションの結果,1.両部門での同時の生産性向上では川上の茶葉生産への効果が増幅すること,2.川上の茶葉生産部門から川下の製茶業部門に対する効果より,川下の製茶業部門から川上の茶葉生産部門に対する効果の方がより大きいものであること,3.原材料供給地での生産性向上を想定しても,生産量増加による価格低下の効果によって,供給先の京都府においても茶業関連産業への効果があった.
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