平成24年度は、食品の素材・中間財生産と最終財生産の供給リンケージが複数の地域間で形成されている場合、それぞれの地域内での最終財生産の競争状態が、地域間農業・食料クラスターの生産にどのような影響を持つのかということについて、緑茶を対象に複数地域間応用一般均衡(CGE)モデルを用いてシミュレーション分析を行った。ここでは、農業(茶葉生産)を素材・中間財生産、製茶業を最終財生産とした。 分析では、素材・中間財供給地域と最終財生産地域について、最終財生産の競争状態を、両地域とも完全競争(シナリオ1)、素材・中間財生産・供給地域が完全競争で最終財生産地域が独占的競争(シナリオ2)、両地域とも独占的競争(シナリオ3)の3つのシナリオについてシミュレーションを行った。 それらの結果を比較すると、最終財生産地域の最終財生産で独占的競争が行われている場合(シナリオ2)、素材・中間財供給地域での素材・中間財の生産性上昇は、最終財生産地域での素材・中間財と最終財生産、それらの移輸出において完全競争(シナリオ1)よりも高い効果があった。さらに、素材・中間財供給地域でも最終財生産での独占的競争を想定した場合(シナリオ3)、同地域内での素材・中間財と最終財生産、それらの移輸出に対して他のシナリオと比較して最も高い正の効果があることが示された。その際、最終財生産地域における影響はシナリオ2と同程度であった。 したがって、緑茶のような地域間農業・食料クラスターでは、素材・中間財生産地域と最終財生産地域のどちらでも最終財の生産で財の差別化による独占的競争が進展した方が、全体として経済効果が高いことが示された。
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