本研究では、子ども農山村交流の類型による効果の違いを解明し、今後の発展条件を明らかにすることを課題とした。初年度の22年度は、すでに収集してある長野県飯田市および飯山市の調査資料の分析を行うとともに、新たな調査地で現地調査を行った。詳細は次の通りである。第1に、子ども農山村交流の先進地域である飯田市と飯山市の「中間組織」の機能分析を行った。子ども農山村交流において中間組織とは、農家と外の社会とを調整する主体を指す。これらの地域を「交流産業」化に対する出発点の違いから「地域づくり型」と「地域産業型」にわけ比較検討した結果、1)両地域の中間組織は地域内の主体を組織化する「内向き」の機能と、都市側のニーズに対応する「外向き」の機能を同時に発揮しながら交流産業化を推進していること、2)交流産業の推進においては、交流の素材となる地域資源の持続性を確保していくことが第一の条件となること、3)交流産業化の課題として、「地域づくり型」においては参加者の安定性が、「地域産業型」においては参加者のすそ野の拡大が求められることが明らかになった。第2に、石川県奥能登地域において詳細な現地調査を実施した。当該地域は、飯田市と同様に「地域づくり型」に分類されるが、行政が交流事業を主導した飯田市とは対照的に、住民主導で交流事業に取り組んできた地域である。こうした地域における子ども農山村交流の実態とその担い手の性格を明らかにするために、行政、集落代表者、参加者を対象とした聞きとり調査を行った。その結果、1)当該地域の地域づくりは、当初、多様なプログラムとして始まったが、近年、活動の重心が交流事業を中心とした地域産業づくりへ移行しつつあること、2)交流産業の展開において、飯田市や飯山市のような中間組織の存在がはっきりと確認できないこと、3)「60歳代の自営業者層」が交流産業化の中心的な担い手となっていることが確認された。
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