1関連分野における人材育成に関する論考を踏まえ、農業への新規参入者のキャリア形成プロセスに沿った「橋渡し役」による支援を検討した。「見習い」から「熟達者」に至る新規参入者の熟達化の段階に対応させて、「橋渡し役」の役割はモデリングからフェイディングへと進められると考えられた。 2香川県における施設イチゴ作新規参入者(7名)に対する聞き取り調査より、「橋渡し役」によるメンター機能の具体的な内容を明らかにした。市場関係者や消費者などとの仲介、栽培技術の指導や失敗のカバー、より高度な栽培技術の提案、営農面での不安の解消といった広範なメンター機能が確認された。 3「橋渡し役」と地域の他の支援主体との連携関係について北海道、長野など5道府県(8事例)の実態調査を行った。自治体による研修などの支援体制との関係や販路の状況によって、「橋渡し役」に求められる役割に違いがあることが確認された。「橋渡し役」の役割の範囲や負担の大きさにもとづくタイプ分けは次のようになる。タイプI:技術習得は公的機関が設置した実習農場での研修が主であり、「橋渡し役」は技術や生活に関する指導・助言を行う。タイプII:「橋渡し役」となる農家が実習圃場を提供して技術指導・助言を行うことに加え、農地や販路の提供のほか生活基盤の確保にも携わる。タイプIII:タイプI、IIの中間。 4さらに、上記実態調査を踏まえ「橋渡し役」による支援の課題を分析し、(1)自治体などが実施する研修との連携を高めるなど、「橋渡し役」による支援の効果が高められる環境整備、(2)圃場での実習中に生じた出荷ロスへの補償など「橋渡し役」に対するリスク負担の軽減措置の充実、(3)「橋渡し役」自身の教育・指導能力の向上機会の確保や「橋渡し役」の育成に向けた組織化、が重要であることを把握した。
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