(1)世界的にカキ養殖の産地が形成されている中で、日本国内においても産地間の競争が激しさを増している。その中でこれまで企業的な大規模経営によって日本のカキ養殖における圧倒的なシェアを占めていた広島県の地位は下落傾向を示し、他方で岡山県やその他の新興産地が、市場対応に工夫を凝らすことでシェアを伸ばしつつある。以上より、本申請研究では、日本のカキ養殖業における家族経営の存立構造と市場対応の状況を明らかにし、小規模な家族経営の再生産条件を解明しようとするものであった。 (2)今年度は広島県呉地区・地御前地区、北海道厚岸地区、佐賀県大浦地区・大浦浜地区・唐津地区でヒアリング調査と資料収集を実施した。 (3)上記のヒアリング調査の結果、次のような知見を得ることができた。①これまで広島県では仲卸業者へ出荷する形態が中心であったが、若手層を中心に生産者自らが取引相手を開拓し、直接取引する動きがみられるようになってきたこと、②北海道では漁協の直売所におけるカキ販売が順調なことから、生産量も増えつつあること、③佐賀県ではカキ小屋が展開する中で殻付きカキの生産や出荷が増えつつあること等が明らかとなった。 (4)以上のことから、生産者による販売の展開や市場対応のあり方の工夫によって、生産量が増加しつつあることが明らかとなった。また、少しずつではあるが、規模の拡大傾向もみられることが明らかとなった。つまり、カキ養殖においては、規模拡大をすすめる経営体とそうではない経営体の二極化傾向が進みつつあることが明らかとなった。つまり、単に生産における規模拡大をしているわけではなく、生産者らによる流通や販売への進出や取り組みによってそれらがなされているということが明らかとなった。
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