研究概要 |
栃木県宇都宮市、沖縄県石垣市の水田群を対象とし,(1)水田群への浮遊土砂流入量、水田群からの浮遊土砂流出量の観測を行い、水田群における土砂収支を求めるとともに、(2)排水路における浮遊土砂の収支構造の検討、(3)水田から流出する浮遊土砂の粒径分布に関する検討、(4)水田内での流亡箇所に関する実験的検討を行った。石垣市の水田ではほぼ通年にわたる観測を行い,宇都宮市の水田では,灌概末期は欠測となったものの,灌慨期を通した観測を行った。 (1)浮遊土砂の収支(流入-流出)は,石垣において-7,171kg/ha,宇都宮において+617kg/haとなった。両水田群ともに,浮遊土砂流出が認められ,水田自体に土壌保全機能は確認できなかった。浮遊土砂流入が見込めない石垣で大量の土砂流出があり,浮遊土砂流入量が期待できる宇都宮の水田群において正の収支となったことから,水田の土壌保全的機能は流砂系のなかで成立していると考えられる。 (2)個々の水田から流出する浮遊土砂流出量と対象地区末端から流出する土砂量を比較すると,排水路において土砂が沈積していることが確認できた。しかし,沈積した土砂は流量増加時にフラッシュされていることから,月単位以上の収支にはあまり大きな影響を与えないことが考えられた。 (3)シロカキ田植え期と普通期の浮遊土砂流出量の粒径分布を求めたところ,両地区ともにシロカキ田植え期の粒径分布が小さくなっていることが確認できた。このことから,観測値として得られる濁度から浮遊土砂量を正確に求めるには,異なる換算式の適用が望ましいことが示唆された。 (4)水田から流出する浮遊土砂の発生源を検討するため,室内実験を行ったところ,流速が増す水尻付近で多く再懸濁していること可能性が高いことがわかった。このことより,水尻付近で重点的に対策を行うことにより,浮遊土砂流出を抑制できることが示唆された。
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