研究概要 |
本研究では,不飽和土への水の浸潤過程において,浸潤前線の位置などを地中レーダによって非破壊で求め,その位置の時間変化から,その土の不飽和水分移動特性を求める手法の開発を目的としている。本年度は川砂を詰めた実験土槽を用いて,不飽和水分移動過程を地表面から非破壊で計測し,そのデータから不飽和水分移動特性パラメータを求めるための実験を実施した。特に,地中灌漑のように土中から直接水分を供給するような場合について,土中の湿潤領域の広がりを地中レーダより求めるための実験を行った。本実験では,地表面下20cmに設置した塩ビパイプに開けた給水孔より一定の水圧5cmをかけて一時間給水し,給水中ならびに実験開始後24時間経過するまで,任意の時間に塩ビパイプの給水孔の真上を横切る測線上で地中レーダのプロファイル測定を行った。その結果,水分供給前の地中レーダプロファイルデータと水分供給後のプロファイルデータとの比較より,塩ビパイプからの明瞭な反射波に加え,給水孔の周囲に形成された湿潤領域の下端と上端から明瞭な反射波が確認された。この上下端からの反射波が時間ともに移動する様子から,湿潤領域の広がりを得ることができた。また,横方向の広がりについても,土槽下端からの反射波に遅れが生じる領域として捉えることができた。そのうえで,本年度実施した実験について,土中電磁波伝播シミュレーションプログラムGPRMaxと不飽和土中水分・塩分移動シミュレーションプログラムHYDRUSを用いて再現したところ,地中レーダの測定結果とシミュレーション結果には良好な一致が見られ,本データから不飽和水理特性の推定を行うことが可能であることが示唆された。
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