研究概要 |
本研究では,コンクリートの中性化状況を現位置で簡便・迅速かつ正確に評価するための技術開発を目的としている。まず,中性化促進試験装置を用いて中性化が進行した状態のモルタル供試体を用意し,異なるpHを再現したモルタル供試体を作成した。そして,高アルカリ条件下での発色指示薬である三種類を対象として,目視および画像解析による数値データの取得を行った。試験結果の解析の結果,最も使用頻度が高いフェノールフタレイン溶液を適用して画像解析を行えば,コンクリートのpHを詳細に評価できることが明らかになった。また,指示薬のうち,アリザリンイエローは発色の判別が困難であったが,トロペオリン-Oではフェノールフタレイン・エタノール溶液の発色領域よりも高いpHでの発色が目視でも確認できることが明らかとなった。以上の結果から,フェノールフタレインとトロペオリン-Oの二種類を同一部材の二か所でそれぞれ適用すれば,コンクリート中のpHのみでなく,pHの勾配を簡便に推定できること,さらに画像解析を併用すれば,詳細なpHの推定が可能であることが明らかとなった。 コンクリートの中性化が問題となるのは鉄筋コンクリートにおいてである。したがって,鉄筋の不動態皮膜が破壊されるpHを今後特定できれば,本研究で得られた知見は中性化の進行予測から中性化残りを評価する際に非常に有効と考える。また,現在検討を進めている実水利コンクリート構造物の中性化特性の把握を進めることで,より実用性を高めることができると考える。
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