研究概要 |
本研究課題では,コンクリートの中性化状況を原位置で簡便・迅速かつ正確に評価するための技術開発を目的としている。昨年度までの研究結果を踏まえ,本年度はコンクリート中の鉄筋の発錆限界とpHの関係を明確化すること,また,二種類の発色試薬(フェノールフタレイン・エタノール溶液とトロペオリン-O水溶液)を用いて,実水利コンクリート構造物を対象とした適用性試験を実施すること目標とした。 pHが7(中性)から13(アルカリ性)の領域となるよう,水酸化ナトリウム水溶液を用意し,切断した異形鉄筋を浸漬することで,鉄筋の不動態皮膜が破壊される水溶液のpHの特定を行った。その結果,pHが11よりも小さい場合,鉄筋の腐食は開始することが確認できた。 昨年度までの研究成果から,フェノールフタレイン・エタノール溶液の発色はpH10.4,トロペオリン-O水溶液の発色はpH12.6であることを確認していることから,フェノールフタレイン・エタノール溶液が発色すれば鉄筋腐食が進行しないとは言えず,鉄筋の安全性を確保するためにはトロペオリン-O水溶液を併用し,コンクリート中のpHを正確に評価する必要があることが明らかにした。 上記二種類の発色試薬を用いて,実水利コンクリート構造物を対象とした中性化評価を実施した。その結果,実構造物を対象とした場合であっても本方法は適用可能であること,また水利コンクリート構造物の場合には常時水中にある部分と気中にある部分では同一部材でも中性化深さが異なることを明らかにした。従って,水利コンクリート構造物の維持管理において,特に気中部の中性化深さを検討しなければならないことがわかった。 以上の結果から,開発した水利コンクリート構造物を対象とした中性化詳細評価技術の有用性が確認できた。
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