研究概要 |
【背景・目的】沿岸域では,良質な淡水を利用するうえで,海水侵入に伴う地下水や貯水池の塩水化が障害となる.塩水化の状況を把握するためには,海水侵入によって深部に生じる淡塩水境界面の位置(淡塩水境界位)変動を把握する必要があるが,そのモニタリング法は未確立である.一方,近年,ケーブルテスターを活用した時間領域反射法(TDR)に基づく,物質層間境界面の検出が検討されている.同法は,ケーブルテスターから発信したマイクロ波の境界面における反射・吸収特性を利用したものである.本研究期間では,TDRによる淡塩水境界位のモニタリング法を構築するために,野外計測用の組立式-同軸型TDRプローブを開発し,淡塩水境界位の室内計測実験によって,その有効性を評価した. 【内容】内径2.4cmのステンレス鋼管の内部に,直径0.5cmのステンレス鋼ロッドを配し,同軸ケーブルとの接合部に,30cm長の鋼管とロッドを2連結した,全長63cmの同軸型プローブを作製した.実験では,内径15cm,高さ102cmのアクリル製四筒カラムの中央に,ケーブルテスターと接続した同軸型プローブを垂直に挿入し,プローブの先端を底面から高さ3cmの位置に固定した.カラム側面には,底面から高さ4.5~66.5cmの位置に32個の4極ECセンサーを2cm間隔に配置した.カラム内を淡水で満たしプローブを水没させた後,底面から海水相当の塩水をゆっくりと給水することで淡塩水2重層を創出させ,淡塩水境界位の上昇を促した.同時に,境界位の上昇過程では同軸型プローブとECセンサーによって境界位の変動を計測した. 【結果】0~60cmの境界位の変動を同軸型プローブとECセンサーで複数回測定し,両計測値を比較したところ,プローブによる境界位の平均測定誤差は3mmとなり,開発したプローブにより淡塩水境界位の変動を高精度で計測できることを確認した.今後は,同プローブを野外で適用し,計測システム全体の妥当性を検証する予定である.
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