研究概要 |
改正リサイクル法の施行により,近年,産業廃棄物の再利用が求められている。なかでも,クリンカアッシュは火力発電所において石炭を燃焼した後に生成される石炭灰の一種であり,原子力発電所から火力発電所へのエネルギー転換が求められているため,産業廃棄物であるクリンカアッシュの再利用が急務である。本研究では,多孔質であるクリンカアッシュの性質に着目し,水田から排出する窒素成分の水質浄化について研究を進めている。H23年度は,クリンカアッシュの透水性と窒素浄化機能に主眼を置いて研究を進めた。 室内においてクリンカアッシュのカラム試験を行った。実験試料には,粒度調整により透水性を変化させた4種類のクリンカアッシュを用意した。Sample1は最大粒径を2mmに調整した試料を用い,Sample2,3,4はFullerの式により粒度調製をすることとした。これらの試料をカラムに充填し(4試料×3反復),流出水の分析を行った。流入水(NH_<4->N:10mg/L)は207±17mL/dで,採水間隔は1~20日が毎日,21~40日が1日おき,41~70日が2日おき,71~121日が3日おきとした。試験後には試料の全窒素量と全炭素量をCNコーダーで測定した。 本研究から次のことが明らかとなった。クリンカアッシュの透水性が異なっても,クリンカアッシュ自体には窒素除去機能が発現することを明らかにした。また,クリンカアッシュの透水性と窒素浄化能には負の相関があり,透水性が小さければ窒素除去量も大きくなることが示された。但し,過度に透水性を小さくすると水田排水に影響を及ぼすことから,今後は水田の水管理に適切な透水性と窒素除去量との関係を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は3年計画であり,2年目が終了した。研究計画通り,2年間で室内実験によってクリンカアッシュの窒素浄化能を定性的に評価することが出来た。但し,クリンカアッシュの入手先である福島県原町火力発電所が被災にあい,また,現地での実証実験を予定していた地域も被災の影響を受けていることから,研究の遂行がやや遅れている。今後は,類似した水田管理が行われている長野県長野市,及び畑草地を対象として北海道留寿都村周辺でクリンカアッシュによる窒素除去の可能性について検討をし,最終年であるH24年度に向けて活動をする予定です。
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今後の研究の推進方策 |
クリンカアッシュと植生によるハイブリッド窒素浄化システムを構築する予定であるが,H24年度は植生との関係から窒素浄化能を評価する予定である。また,当初福島県浪江町と北海道の畑作地域をモデル地区として実証実験を行う予定であった。北海道については留寿都村をモデル地域として,活動を進めているので,H24年度も継続して調査を行う。一方,福島県については震災の影響からモデル地域を変更せざるを得ないため,以前より調査研究を進めて来た長野県長野市の水田圃場においてクリンカアッシュによる窒素除去の実証実験を進める予定である。
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