研究概要 |
複数の果実が同時に着果する場合,葉からの光合成産物の転流量は果実間で偏りがあり,一部の果実が成長を停止したり,落果する.この不均一な光合成産物の分配メカニズムの解明に,直接師管液を採取する方法は困難である.そこで外部環境を制御した条件で栽培を行い,葉と果実との間で光合成産物などの物質がどのように伝達されているのか明らかにする. 本年度は、まず、自然光下の温室内で、夏季に遮光を行い、流れ果の発生数・率を調査した。その結果、遮光区の流れ果数・率は無遮光区よりも高くなり、日射量の不足が流れ果の発生を助長し、果実収量を低下させることが確認できた。 次に、秋季(10-11月)には遮光区と無遮光区(日積算日射量:4.1、7.2MJ/m2)を設け、LED補光あり(+区)、無し(-区)を設けた。冬季(11月-1月)には+、-区のみとした。補光対象は開花節の下5節以内にある完全展開葉の2葉とし、赤青LEDパネルで葉面PPFを95~180(最大380)μmol m-2 s-1で補光した。秋季は24hで約4週間、冬季は16hで約6週間補光した。約10日おきに補光節位を上位節へ移動した。両試験とも個体あたりの推定日積算受光量(-区:各区の日射量×総葉面積、+区:各区の日射量×補光葉以外の葉面積+補光量×補光葉面積)、流れ果率、果実収量を測定した。 その結果、秋季の遮光区では-区で流れ果率が最も高く(14%)、遮光+区で無遮光区と同程度(約5%)に流れ果率が軽減した。秋季の果実収量は遮光の有無に寄らず、+区で-区より高い傾向を示した。冬季の+区の受光量は-区より8%多かった。流れ果率は-区(7.0%)の半分以下となり、果実収量は+区で-区より有意に高かった。 以上より、個葉へのLED補光によって株あたりの受光量を高めることで流れ果の発生を軽減でき、日射の少ない冬季の果実収量を高められることが明らかとなった。
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