本研究では粉末食品の高品質化とその製造プロセスの効率化を目的として、流動層造粒におけるバインダとして微細水滴を含んだ水蒸気(アクアガス)の利用を試みる。粉末食品は微粉末の状態では使用時に湯や水に溶解する際にランピング(ダマ)を生じやすい。これを防ぐ目的で、多くの粉末食品は造粒操作により顆粒状に調製されるが、粉末食品の高品質化と製造コスト削減のため、バインダ添加量(加水量)の低減が課題となっている。本研究ではアクアガスを用い効率的に水滴を粉末に付着させることで加水量を低減した造粒プロセスの構築を目指す。 本年度はコーンスターチおよびデキストリンを材料として、アクアガスバインダの噴霧圧および供給速度を変化させ流動層造粒試験を行い、流動層の含水率変化を解析し、更にバインダ添加量に対する顆粒の成長について解析を行った。また水蒸気のみを流動層に噴霧し造粒試験を行い、アクアガスバインダを構成する水蒸気および水滴が流動層含水率変化に与える影響について解析を行った。 アクアガスバインダを用いた場合も、従来の液体バインダを用いた場合と同様に、流動層の含水率は恒率乾燥と減率乾燥の並列モデルで表せた。アクアガスバインダの場合、恒率乾燥により蒸発する水分は、同等供給速度の液体バインダを用いた場合よりも少なく、これはアクアガス中の水蒸気が流動層の粉体に凝縮しているため、バインダの見かけの蒸発量が少なくなっているためと考えられた。更にアクアガスバインダでは水滴の蒸発量割合は従来の液体バインダより多かったが、これはノズルから噴射される直前のアクアガスバインダの水滴温度が110~140℃と高温であったためと考えられた。また、アクアガスバインダを用いた場合、従来の液体バインダを同等の噴霧圧および速度で供給した場合と比較して、約50%から等量の水分添加量で、同等サイズの顆粒を生成することが可能であった。
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