研究概要 |
【目的】乳酸菌遺伝子配列より同定した免疫刺激性CpG ODN(MsST)が、マウス免疫細胞においてIL-33を誘導することを発見した。IL-33は炎症性サイトカインの一つであり、喘息や花粉症などのアレルギー炎症部位に強く発現していることが知られているが、その活性化メカニズムや作用については不明な点が多い。そこで本研究ではMsSTが誘導する分泌型IL-33に着目し、そのプロセシング機構の解析と、他のTLRシグナリングにおける発現パターンについて解析することに注力した。【方法】C57BL/6マウスの脾臓細胞を用いて、MsSTおよび陰性対照ODN1612で刺激処理した。また免疫沈降法を用いて細胞培養液上清中の分泌型IL-33について抗マウスIL-33抗体を用いたウエスタンブロット法により解析した。さらに各TLRリガンドを用いて、分泌型IL-33の発現パターンを経時的に解析した。【結果】MsST刺激後、48-96hrにかけて27kDa付近に新規なシグナルが検出され、IL-33様タンパク質と呼ぶこととした。また、免疫沈降法により同シグナルは細胞培養液上清中に多く存在することが明らかとなり、分泌型サイトカインであることが示唆された。さらにTLR1/2,4,7,のリガンドであるPam3CSK4,LPS,およびimiquimod刺激によりIL-33様タンパク質が誘導されることが示された。【考察】本研究で見出された分泌型IL-33様タンパク質は、一部のTLRシグナリングを介して強く誘導されることから、Th2免疫応答を誘導するproIL-33とは異なる作用を有している可能性が示唆された。また、同タンパク質は、proIL-33が断片化を受けたものなのか、それともIL-33と同じファミリーに属する新しいサイトカインなのか不明のままである。今後は、分泌型IL-33様タンパク質を高濃度で精製し、その細胞分子レベルでの作用の解明と詳細なタンパク質解析を行いたいと考えている。将来的には本研究の発見を基礎として、乳酸菌オリゴヌクレオチドを用いた炎症性疾患の予防や改善に寄与する機能性食品の開発に貢献することを期待している。
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