研究課題
ニワトリ幼雛において、興奮性神経伝達修飾物質の脳内投与による摂食行動への応答は、成長やストレス感受性が大きく異なる肉用種と卵用種に明らかな違いが認められている。このことは、これら系統間における脳内興奮性神経伝達制御機構に違いがあることを示唆している。そこで、成長やストレス感受性と関連する代謝が脳内興奮性神経伝達により調節されるという仮説を立て、検証することにした。これまでの摂食行動における報告から、興奮性神経伝達修飾物質への感受性が高いことが示唆されている卵用種を用いた。昨年度、NMDA受容体の拮抗薬投与により、血中グルコースが有意に増加することが明らかになった。そこでこの作用機構解明のために、血中コルチコステロンおよび遊離アミノ酸濃度および脳内遊離アミノ酸含量への影響を分析した。血中コルチコステロン濃度には影響を与えなかったことから、血中コルチコステロンが関与しないことが示唆された。更に血中、終脳および間脳内のアミノ酸にも影響を与えなかったことから、アミノ酸代謝を介した作用ではないことが明らかになった。一方、内因性のNMDA受容体作動物質のひとつであるD-アスパラギン酸は、単離ストレス状況下において鎮静作用を有するが、その作用機構はL-アスパラギン酸とは異なることを明らかにした。以上より、ニワトリ幼雛においてNMDA受容体を介した代謝および行動調節の一部が明らかになったが、これら作用機構解明には更なる研究が必要であることが示唆された。
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