乳酸菌の様々な健康保健効果を効果的に発揮させるためには、乳酸菌が腸管粘液に付着し増殖することが重要であるが、従来の腸管付着性試験は、操作が煩雑であり、時間とコストがかかるのが現状である。一方で最近、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)が乳酸菌の菌体表層で発現し、付着因子として働いていることが明らかになった。ヒト腸管由来の乳酸菌30菌株のGAPDH酵素活性をマイクロプレート法により測定したところ、12時間培養菌体では30菌株中21菌株、18時間培養菌体では30菌株全てからGAPDH酵素活性が検出された。このことからGAPDHは普遍的に乳酸菌の菌体表層に存在している可能性が示唆された。また、BIACORE付着性試験とGAPDH酵素活性の間には強い正の相関が見られたことから(p<0.01)、少なくともヒト腸管由来の乳酸菌においては、GAPDH酵素活性を用いた腸管付着性乳酸菌の選抜が可能であることが示された。しかしながらGAPDH単独では選抜漏れがあることも分かった。そこで新たにブタ腸管から乳酸菌を分離・同定したところ、全部で20菌株の乳酸菌を分離・同定することができた。 レセプターオーバーレイ分析(RO分析)の結果、Lactobacillus gallinarum PL2-5のPBS抽出タンパク質(約45kDa)がムチンに対して付着性を示すバンドとして検出された。この付着は濃度依存的であり、さらにpH8.2よりもpH5.0で濃いバンドとして検出された。本タンパク質のN-末端アミノ酸配列解析の結果、ADAIGの5残基を決定したが、同定することはできなかった。 また、RO分析において、多くの菌株で複数のアドヘシンを持つことが明らかになり、それらを同定し、付着性との相関性を明らかにする必要があると考えられた。
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