平成22年度に高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて、鶏、豚およびカゼインから調製したペプチドをそれぞれ4週間投与し、SHRから血管内皮前駆細胞(EPC)および血漿と各種組織(肝臓、心臓、腎臓、血管)を得た。平成23年度は各飼料を投与した際の腎臓の影響を確認するため、血漿中の腎臓マーカー(β-Microglobulin、Calbindin、TIMP-1、VEGF、KIM-1、Cystatin、Osteopontin等)の測定を実施した。また、腎臓と心臓からはm-RNAを抽出したので、各種サイトカイン(CD34、Flk-1、NOS3等)のRT-PCRを行った。その結果、鶏コラーゲン加水分解物区と豚コラーゲン加水分解物区で、対照と比較して一部の腎炎症マーカー(CLU:鶏、TIMP-1:豚)で約1.2倍に有意に増加する項目が認められたものの、大きな違いは認められなかった。一方、RT-PCRの結果から、鶏コラーゲン加水分解物区では、EPCのマーカーであるCD34とFlk-1が1.5倍と1.8倍の有意な増加が認められた。また、カゼイン加水分解物区ではFlk-1とNOS3の発現が有意に増加した(それぞれ2倍と8倍)。各飼料の投与によるEPCの活性化をより明確にするため、末梢血から調製したEPCに各飼料を投与したラット血漿を添加して、メチルセルロース培地で培養したところ、鶏コラーゲン加水分解物区ではEPCの有意な増殖が認められ、さらにカゼイン加水分解物区ではEPCから脈管形成により初期血管の形成が確認された。 今回の結果から、鶏コラーゲン加水分解物の摂取はEPCの増殖を活性化し、さらにカゼイン加水分解物はEPCの血管内皮細胞への分化を誘導することが明らかとなった。
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