1.RACE法により3種類のフルクタン分解酵素遺伝子Pp6-FEH1のホモログを単離した。これらはいずれもアミノ酸レベルでPp6-FEH1と92%の相同性を示した。3つのβ-フルクトシルトランスフェラーゼ保存モチーフを有し、またインベルターゼ活性と関連するAsp239はMetに置換されているなど、配列の面からフルクタン分解酵素遺伝子である可能性が高いと考えられた。Tail-PCR法によりPp6-FEH1の5'UTRの上流約2kbpの3種類の配列を取得した。これらは相互に保存性が高く、同一の対立遺伝子の上流配列であると考えられた。シス配列の探索の結果、ABAやサイトカイニンによる誘導、CBFによる低温誘導、糖飢餓誘導に関するシス配列などが認められた。 2.刈取り処理後のチモシー球茎におけるPp6-FEH1の発現は3時間で誘導され、96時間後には140倍に達した。一方3時間後以降、分解酵素活性の上昇およびフルクタン含量の低下も認められたことから、Pp6-FEH1の遺伝子発現誘導がフルクタン分解酵素活性の増加およびフルクタン分解に関与していることが示唆された。チモシー幼苗における植物ホルモンのPp6-FEH1発現量への影響を評価した結果、ABAおよびカイネチン処理により発現が誘導されることが明らかとなった。また、FEH活性を負に制御すると報告のあるグルコースとスクロースの影響を評価した結果、これらの糖の添加により刈取り処理後のPp6-FEH1発現量増加が有意に抑制された。以上よりこれらの物質の増減がPp6-FEH1の遺伝子発現を制御している可能性が示唆された。
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