栄養制御による筋肉内脂肪蓄積のメカニズムの一端を明らかにすることを目的として、平成23年度は特に、筋肉タンパク質の合成および分解、コラーゲンタイプの発現パターンおよび脂肪細胞の分化マーカーの測定を行い、ほ乳期のエネルギーおよびタンパク質摂取量制限による筋肉および結合組織と筋肉内脂肪の蓄積との関連について調べた。【方法】供試動物は父方半兄弟LWD雌子豚16頭を用いた。処理区は、養分要求量を充たす量を給与する対照区と、ビタミン、ミネラル摂取量は充足させ、エネルギーおよびタンパク質摂取量のみ対照区の50%に相当する量を給与する試験区の2区とした。試験期間は3日齢から28日齢までとし、28日齢到達時点でと畜した。サンプリング部位は胸最長筋とし、コラーゲンmRNA(I、III、IV型)発現量および脂質代謝関連遺伝子(PPARγ、PPARδ、C/EBPα、アディポネクチン、SREBP1)の発現を測定した。また、筋肉タンパク質分解酵素(カルパイン、プロテアソーム、カテプシン)について測定を行い、タンパク質合成の指標としてS6タンパク質のリン酸化について測定した。【結果】胸最長筋肉重量は、試験区は対照区より有意に高かった(P<0.01)。一方で、筋肉タンパク質分解酵であるカテプシン(BおよびL)において試験区が対照区より有意に低い値を示し(P<0.01)、また、S6タンパク質のリン酸化は低い値を示した(P<0.05)。このことから、タンパク質分解は抑制されていたものの合成も抑制されたために、筋肉重量の増加が抑制されたと考えられた。一方、各タイプのコラーゲンおよび脂質代謝関連遺伝子のmRNA発現量は処理区間で差がなかった。以上から、ほ乳期における栄養制限によって筋肉発達が抑制されたこと、コラーゲンおよび脂質代謝関連遺伝子に関しては、筋肉内脂肪の蓄積との関連性は認められないことを明らかにした。
|