耕作放棄地を活用した周年放牧、季節放牧および舎飼の肉用牛繁殖システムについて LCAを行った。山口県内の黒毛和種牛繁殖農家を対象に取得したデータをもとに、周年放牧および季節放牧システムのモデルを構築した。周年放牧システムでは、育成期と分娩前後6ヶ月は舎飼、それ以外の時期は放牧を行うものとした。放牧地について春~秋季は耕作放棄地、冬期は耕作放棄地を含む野草地(周年・野草)あるいはイタリアンライグラス草地(周年・牧草)を利用することを想定した。季節放牧システムでは、繁殖牛を春~秋季の4.6ヶ月間、耕作放棄地で放牧し、そのほかの時期は舎飼することを想定した。舎飼システムの評価は6戸の各農家について行った。 周年・野草が各評価項目(温室効果ガス、酸性化、富栄養化、エネルギー消費およびLIME2統合化指標)で最も環境影響が小さいと評価されたが、季節放牧との差は小さかった。周年・牧草は他の放牧システムと比較して環境影響が大きいと評価された。したがって、季節放牧から周年放牧への転換による環境影響低減効果は高くないものと考えられた。舎飼はすべての項目で最も環境影響が大きいと評価された。一方、評価結果における各舎飼農家間のばらつきは大きく、舎飼の中で最も環境影響が小さいと評価された農家は周年・野草の値を下回っていた。このような環境影響の小さい舎飼システムでは、副産物の飼料への活用および低水準の飼料給与が行われていた。 舎飼管理下にある中国地域の肉用種繁殖牛すべてを周年放牧(冬季の放牧地:野草地およびイタリアンライグラス草地を同期間)へ移行させた場合、環境影響低減量(年あたり)は温室効果ガス:2585 t-CO2eq、酸性化:158 t-SO2eq、富栄養化:17.9 t-PO4eq、LIME2統合化指標:17574 万円であるが、エネルギー消費は52.2 GJ増加すると試算された。
|