研究概要 |
本年度は昨年度に引き続き、卵・精子相互作用に密接に関わる卵膜マトリックスの構造と成り立ちの解明を目指して研究を行った。特に、卵膜構成タンパク質分子上の卵膜マトリックスの形成に関与する領域を特定するため、抗卵膜構成タンパク質抗体を使用して、より詳細な解析を行った。本年度は、昨年度までに作製した、ニワトリ卵膜を構成する 3 種のタンパク質 (ZP1, ZP3, ZPD) の組換えタンパク質をマウスに投与し、卵膜構成タンパク質の分子内領域に特異的な抗体を調製した。ニワトリの ZP1 は肝臓で発現して血液中に分泌され、血液中を卵巣まで運搬されると、卵巣で発現し分泌された ZP3 と結合して、卵膜マトリックスの骨格となる ZP1-ZP3 複合体を形成すると考えられている [Okumura et al., 2007]。そこで、SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離された ZP3 に対し、ZP1 を含む産卵鶏血清、液相等電点電気泳動で分画された産卵鶏血清の ZP1 を含む画分、または ZP1 の各種組換えタンパク質を用いて、ZP1 と ZP3 の結合解析を行った。その際、上記の抗体が ZP1 と ZP3 の結合に対して阻害効果を示すかどうかを確認した。その結果、ZP1 分子内と ZP3 分子内の特定の領域が ZP1-ZP3 複合体の形成により強く関与していることが推定された。また、ニワトリ卵膜に対し、上記の抗体を用いて免疫蛍光染色を行い、共焦点レーザースキャン顕微鏡によって 3 次元的に観察した。その結果、ZP1 分子は一定の方向性をもって卵膜マトリックス内に組込まれていることが推定された。本年度の研究成果は、脊椎動物の卵-精子相互作用において重要な役割をもつ卵膜について、その構造と形成機構を解明するための研究を今後さらに進展させていくための、重要な手がかりとなるものである。
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