研究概要 |
本研究は次世代シーケンサーを用いた網羅的・高解像度なトランスクリプトーム解析方法(TSS-seq・RNA-seq)をアピコンプレクス門原虫に適応することで、遺伝子発現のカタログ化と転写制御の分子機構を明らかにし、創薬ターゲットのスクリーニングに結び付けることを主眼としている。 2年目に当たる平成23年度では、研究計画当初に予定していたトキソプラズマ原虫のタキゾイト(Tz)とブラディゾイト(Bz)に、アメリカ農務省Dubey博士より供与を受けたスポロゾイト(Sz)を加えた計3形態間でのトランスクリプトームを、TSS-seq・RNA-seqを用いて取得した。 転写開始点に特化しプロモーター領域の特定が可能なTSS-seq法を用いた結果、Tz, Bz, Szのそれぞれで、811, 1044, 2136か所のプロモーター領域を特定するに至った。さらに、ステージ特異的なプロモーターを選抜し解析を行った結果、BzではCCAGTG、SzではTGTnnnnACAがステージ特異的な制御に関与するcis-elementであることが示唆された。 一方、遺伝子発現のカタログ化に有効なRNA-seq法を用いた結果、Tz, Bz, Szのそれぞれで特異的に発現する、96, 196, 548個の遺伝子を特定するに至った。この中には、それぞれ、1, 1, 2個のAP2転写制御因子が含まれていたことから、それらが同定されたcis-elementを介してステージ特異的な遺伝子発現を司っていることが予想された。
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