研究概要 |
生体がストレスに曝されると、その情報が脳内で処理された結果神経内分泌系のストレス反応が引き起こされる。申請者は過去の研究において、この脳内ストレス情報伝達経路に重要な仲介因子としてシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2;プロスタグランジンの誘導型合成酵素)を同定した。本研究は、新たなストレス伝達経路として期待されるCOX-2を介したストレス種非特異的な脳内情報ネットワークを明らかにすることを目的としている。実験にはラットを用い、1,急性ストレス時の脳内各部位におけるCOX-2発現量の経時的測定/2,幼児期慢性ストレスが成熟後の脳機能に与える影響の解析を行った。その結果、1,感染・低栄養・拘束という3種類いずれのストレス刺激によっても神経内分泌系の中枢である視床下部においてCOX-2の発現量が変動したが、そのパターンはストレス種間で異なるものだった。2,離乳から性成熟までの間スクロース水摂取による過栄養環境におかれた個体では、不安傾向の有意な減弱が見られた。現在は免疫組織学的な手法を用いてこの1で観察されたCOX-2の発現部位および細胞種の同定することでストレス種ごとの情報伝達経路の解析を進めている。さらにこの経路がストレス誘導性の情動・行動異常に関与することの証明を2のモデルを用いて試みている。
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