研究課題
研究代表者らはこれまでに、卵巣内に発現するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が黄体の退行因子として働くことを明らかにした。また、GnRHが性周期黄体において、主たる黄体刺激因子であるプロラクチン(PRL)受容体の発現を抑制し、黄体のPRL感受性を低下させる可能性も見出した。これらの結果はGnRHとPRLが黄体機能に拮抗的に作用する可能性を示している。本年度の研究では、PRLがGnRHの黄体退行作用に及ぼす影響について明らかにすることとした。まず、Wistar-Imamichiラットの偽妊娠各時期の黄体から総RNAとタンパク質を抽出し、偽妊娠中の発現動態を調べた。GnRH、GnRHシグナルのバイオマーカーであるアネキシンA5(Anxa5)、PRL受容体の発現量をRealtime RT-PCRおよびウェスタンブロット法を用いて測定した。GnRH、Anxa5のmRNA発現およびタンパク質発現は偽妊娠中期に低下し、後期に増加した。対照的に、PRL受容体の発現は中期に増加して後期に低下した。次に、PRLのGnRH発現に対する作用を調べるために、偽妊娠5日目のラットにドーパミン作動薬CB-154を連日投与して内因性のPRL分泌を阻害した。CB-154投与より2日後、血中プロジェステロン濃度の低下がみられるとともに、偽妊娠黄体におけるGnRH、Anxa5のmRNA発現は増加し、PRL受容体の発現は低下した。一方、偽妊娠5日目のラットの卵巣嚢内にGnRH作動薬を局所投与した場合には、血中プロジェステロン濃度の低下はみられたが、PRL受容体の転写量の減少はみられなかった。以上より、偽妊娠黄体において、GnRHは黄体退行期に増加してプロジェステロン分泌能を低下させる作用を持つが、PRL受容体発現低下作用についてはPRLによって抑制されることが示された。本成果は2011年9月に開催された第152回日本獣医学会学術集会にて報告した。
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