動物が季節的な繁殖活動(光周性)を行うためには、日長を測時し適切な季節を読み取らなければならない。近年この季節測時機構は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の新たな作用によるものである事が証明された。すなわち下垂体前葉の付け根に位置する下垂体隆起葉から産生・分泌されるTSHが脳内に作用し生殖腺を制御する機構である。このように下垂体隆起葉を含め内分泌機構には、よく分かっていない器官や機能が残されている。そこで、TSHと同様に下垂体隆起葉で季節・時刻依存的に発現変動する転写共役因子Eyes absent 3(EYA3)に着目しEYA3の機能解析より、家畜、家禽における下垂体隆起葉の内分泌的機能を解明する事を目的とした。 転写共役因子のEYA3が転写制御している遺伝子を抽出するために、まずEYA3と複合体を形成する転写制御因子をYeast two-hybrid法を用いてスクリーニングを行った。光周期におけるニホンウズラ下垂体隆起葉から、EYA3と複合体を形成する可能性のあるタンパク質を13個まで絞り込み、さらにin situ hybridizationによる発現部位の同定より7遺伝子まで絞り込むことに成功した。この中には、EYA3ノックアウトマウス脳においてmRNAの発現が減少している遺伝子も含まれていたが、転写制御因子は含まれていなかった。そこで、EYA3の光周期下の下垂体隆起葉における経時的な細胞内局在を免疫組織化学により検討したところ、核内よりも細胞質に多く局在している傾向があった。さらにEYA3の転写共役因子としての働きをルシフェラーゼアッセイより検討したところ、光周期における下垂体隆起葉のEYA3は転写共役因子としてだけでなく他の機能も持っていることが明らかになってきた。
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