研究課題
本研究の目的は、ほ乳類の精子形成を支える精子形成幹細胞の特定である。平成22年度において、精子形成幹細胞の最有力候補と考えられてきたGFRα1を発現するAsingle型未分化型精原細胞(As)は、教科書的に幹細胞の自己複製様式と考えられている厳密な非対称分裂を行っていない可能性が示された。さらに、実際には、Asは分裂後に不完全分裂により2つの娘細胞が細い細胞間橋で連結したApaired(Apr)やAaligned(Aal)になり、その後、細胞間橋の断片化により、再びAsに逆戻りすることが示唆された。定常状態における組織幹細胞とは、自己複製能と分細胞の生産能力によって定義づけられるものである。前述の成果と併せて考えると、「AsだけでなくAprとAalを加えた未分化型精原細胞集団をまとめて幹細胞として機能する」可能性が高いように思われる。平成23年度においては、この可能性を検証するため、GFRα1を発現するAs、AbrそしてAalの細胞集団を任意の時期に不可逆的にパルス標識し、その細胞が長期間にわたって組織幹細胞として機能し続けるか否かを検証するための実験系をくみ上げた。すでに、ラベル後1か月までの実験結果を得ており、この間標識した細胞集団は確かに幹細胞として機能し続ける(自己複製と分化細胞の生産を両立する)という明確な証拠を得た。現在、6カ月~1年間という長期間にわたっても幹細胞として機能し続けるか否かについて実験継続中である。実験条件の至適化にかかわる予備的実験は完了しており、約半年後には全ての結果が得られる予定である。この実験の結果、仮説が正しければ、着目した細胞群が精子形成幹細胞であるという明確な機能的証明となり、本研究の目的を達成することになる。
2: おおむね順調に進展している
平成22,23年度の成果から、本研究の目的である「精子形成幹細胞の特定」を達成しつつある。また、平成24年度(最終年度)研究遂行に必要となる実験材料の準備や予備実験についても既におおむね終了しており、最終年度内の確実な目的達成のめどもついている。
引き続き着目した細胞集団の幹細胞としての機能的解析を推し進める。この内容は、申請時の計画とは異なる。これは、平成22,23年度の研究成果から、計画時の仮説が覆ったため、目的の達成のために計画を練り直したためである。今後も、予想外の結果が得られることも想定しながら、目的の達成に向けて研究を着実に遂行する。
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PLoS ONE 2011 Dec 6(12) : e28367
巻: 6 ページ: e28367