研究課題
感染症に対する宿主側のインターフェロン誘導性の防御機構において、オリゴアデニル酸合成酵素(OAS)は重要な働きを持つ。一方、げっ歯類にはフラビウイルス感染に対して特異的に働く感染抵抗性遺伝子があり、近年、これがOAS遺伝子ファミリーのOas1bであることが明らかにされた。しかし従来、感染症防御に非特異的に働くOAS遺伝子ファミリーにおいて、何故Oas1bがフラビウイルス感染に特異的に抵抗性を示すのかは不明である。そこで本研究ではOas1bによるフラビウイルスに対する特異的な感染防御機構を解析し、自然界におけるフラビウイルスの感染病態及び伝播への影響を解明することを目的とする。野生マウス由来Oas1b遺伝子導入コンジェニックマウス(B6.MSM-Oas)にダニ媒介性脳炎ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ウエストナイルウイルス等のフラビウイルスを皮下接種した所、全ての個体が生存し、Oas1b遺伝子に欠損を持つB6マウスでは接種後高い病原性を示したため、Oas1b遺伝子を介したフラビウイルス特異的な抵抗性が示された。さらにダニ媒介性脳炎ウイルスについて、ヒト脳炎患者由来株であるSofjin株と犬血液より分離されたOshima株を脳内接種でB6.MSM-Oasマウスに感染させた所、Oshima株では一過性の体重減少を示した後回復したのに対して、Sofjin株では神経症状を伴う脳炎を引き起こし死亡し、Oas1bによるフラビウイルス抵抗性が株間で異なる事が示唆された。両株のアミノ酸配列の相同性は98%以上あることから、B6.MSM-Oasマウスにおける病原性の相違に関わるアミノ酸配列を同定することにより、Oas1bを介したフラビウイルス特異的な感染抵抗性に関わる分子メカニズムの解明につながるものと期待される。
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