研究課題
感染症に対する宿主側のインターフェロン誘導性の防御機構において、オリゴアデニル酸合成酵素(OAS)は重要な働きを持つ。一方、げっ歯類にはフラビウイルス感染に対して特異的に働く感染抵抗性遺伝子があり、近年、これがOAS遺伝子ファミリーのOas1bであることが明らかにされた。しかし従来、感染症防御に非特異的に働くOAS遺伝子ファミリーにおいて、何故Oas1bがフラビウイルス感染に特異的に抵抗性を示すのかは不明である。そこで本研究ではOas1bによるフラビウイルスに対する特異的な感染防御機構を解析し、自然界におけるフラビウイルスの感染病態及び伝播への影響を解明することを目的とする。前年度までの研究で野生マウス由来Oas1b遺伝子導入コンジェニックマウス(B6.MSM-Oas)にダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)ヒト脳炎患者由来株であるSofjin株と犬血液より分離されたOshima株を脳内接種した所、Oshima株では一過性の体重減少を示した後回復したのに対して、Sofjin株では神経症状を伴う脳炎を引き起こし死亡した。そこで今年度は、両者の病態の相違を詳細に解析した。B6.MSM-OasマウスにおいてOshima株は感染後Oas1bが発現するとともにウイルス量が減少していたが、Sofjin株感染時ではOas1bは同様に発現していたがウイルス量は全く減少していなかった。さらに病理組織解析において、Oshima株感染B6.MSM-Oasでは炎症反応は認められたものの、ウイルス抗原はほとんど検出されず、また神経細胞の変性・壊死も目立たなかった。しかし、Sofjin株感染では神経細胞の変性・壊死とともに多数のウイルス抗原が検出され、これが死に至った要因だと考えられた。以上の結果から、Oas1bによるフラビウイルス抵抗性には株間で相違があることが明らかになり、これが実際の人における感染時の病態とも関連していることが示唆された。
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