「体質」と呼ばれているものの多くは、個々のゲノムに書き込まれた遺伝情報のわずかな差(遺伝子多系)に起因する。疾病に関連するSNP解析の進展は著しく、現在までにいくつかの遺伝子SNPがヒトで報告されており、肥満に関連する遺伝子についても多くの知見が蓄積されてきているが、ネコでは皆無である。ネコはイヌに比べ2型糖尿病が多く、その最大リスク要因は肥満である。肥満は生活習慣などの環境要因に加えて複数の遺伝素因が組合わされることが原因で発症する。申請者は疾病をきたす前に臨床検査技術、特に遺伝子診断法により発症するリスクを低減させる事が重要と考え、新知見としてヒトで肥満に関与する17遺伝子の発現調節領域及びエクソン部位のSNP解析(1個体あたり合計解析長63kb)を行った。結果、正常20頭と肥満ネコ20頭のグループ間に差異の見られる5遺伝子SNP(グレリン、レプチン、SREBP1、インスリン受容体およびCDKAL1遺伝子)を肥満関連遺伝子と推定した(申請者未発表データ)。このうちCDKAL1遺伝子はヒト肥満および糖尿病原因遺伝子として注目されていることからネコのCDKAL1遺伝子のcDNAクローニングを行った。結果、ヒトと同じく16のエクソンを含む全長約700kbの遺伝子であることが判明した。またmRNAの発現をリアルタイムPCR法により解析したところ、肝臓で最も高い発現がある一方、精巣で最も低い発現様式機構を有する事が明らかとなった。これらの成果をもとに今後さらに新規SNPの検索を進める予定である。
|